褒めるだけのコーチを選ばない方がいい理由
コーチングの基本は、メンバーの話をまず徹底して聞くこと。 これに異論のある人は少ないのではないでしょうか。
相手の存在を認め、肯定する。
この延長線上で「褒める」ことがとにかく重要だという考えのマネージャーも多いのではないでしょうか。
「叱ったらイマドキの若者は萎縮してしまう。だから褒めて伸ばす」
もっともらしく聞こえます。
野村監督の教え
昨年、惜しまれながら亡くなったプロ野球の名監督、野村さんは、コーチングについて、以下のように言っています。
人を育てるプロセスには「無視」「称賛」「非難」の3段階がある
無視は、新人や能力不足の選手に対して 称賛は、可能性が見えてきた選手に対して 非難は、成長した、中心選手に対してのコーチング手法です。
野村監督は野球の人ですので、野球選手に当てはめて説明しています。
ビジネスパーソンのコーチングプロセス3段階とは
これをビジネス世界や、会社で考えるとこんな感じでしょうか。
「無視」 レベルが低く、ジュニアのときは、あまり関わらず観察しながら”見守る”。
「称賛」 もう少しレベルが上がって、ある程度の実力がついてきたら褒めて伸ばす。
「非難」 さらにレベルが上がり、中心的な人材になったら、その程度で納得し成長を止めないように、厳しいフィードバックで気づきを与える。
重要なことは、メンバーのレベル感を見定めること
このブログの最初に書いた「叱ったらイマドキの若者は萎縮してしまう」というのは、実はイマドキに限りません。
実力のないときに、厳しいことばかり言われても、成長し始めることは難しいというのは、誰しもが自分自身のキャリアの初期に通った道ではないでしょうか。 誰かが認めてくれることで、自信がつき、さらに努力をしてキャリアを作っていく、というのは若い時代の典型的な成長モデルです。
もちろん、例外的に強力な精神力と成長意欲を持ち、どんなに叩かれてもガンガン努力をし続けられる人もいますが、多くの人にとって、まずしっかり見守ることが重要です。
そして、成長し始めたら、それをしっかり認めて褒める。
大事なのはこの先です。
せっかく中心を担える人材に育っても、「これでもう十分いいんだ」と慢心すれば、その先の成長は鈍化します。
そのレベルになったら、さらに伸ばしていくためには、野村監督の言う「非難」、ビジネスの世界で言えば「厳しいフィードバック」の出番です。
このように、コーチは、メンバーがどのレベルにあるかをしっかりと見定め、そのフェーズにあったコーチングを与えていくことが重要です。
逆にコーチングを受ける場合。 いつまで経っても耳に心地いいフィードバックしか与えてくれないコーチは、実はあなたにとって本当にいいコーチではない可能性が高いということを理解しておきましょう。