失われた30年は誰の責任か

今年7月1日、テスラの時価総額がトヨタを抜くという、日本人にとっては衝撃的なニュースがありました。
それから約1ヶ月。
この記事を書いている8月4日時点では、トヨタが18兆円弱に対して、テスラ29兆円と、さらに差が拡大しています。

テスラはトヨタと比較すると、生産台数が30分の1、売上は10分の1に過ぎません。
自動車産業という、これまでであれば数十年の経験の蓄積が必要な業界に、ITとEVというイノベーションを持ち込み、設立17年で世界トップのメーカーに上り詰めたのです。

Made in Japanは世界一?

日本企業は、戦後復興から高度成長期で奇跡的な成長を成し遂げ、バブル時代に企業価値で世界を席巻しました。
牽引役は、自動車や半導体産業などの製造業。
Made in Japanは世界に誇る品質と、高機能でした。

僕たちはその成功体験の幻影を今でも引きずっているのではないでしょうか。

もはや、半導体や家電メーカーは、世界的には見る影もなく相対的な価値が下がってしまいました。
最後の砦だった自動車産業も、冒頭のように時代は明らかに変わりました。

もはや製造業ですら、日本は世界一ではないのです。

個人的には、ひいきめに見て「壊れない」という点において、多くの製品でまだ日本は世界一ではないかと思います。
しかしその他の点では、もはやトップランナーから脱落しています。

2つ僕の実体験を以下二つ紹介します。

2000年頃にアジアの企業と仕事をする機会が多かった時期の話。

当時すでに「Samsungの方がSONYよりクール」と言っていた人がいて、僕は衝撃を受けました。
いまだったらSamsungはダントツトップ企業ですが、当時は僕たち日本人にとって「安かろう」の印象だったからです。

井の中の蛙とはまさにこのことです。

2004〜2010年までドイツで働いていた時の話。

当時ヨーロッパの同僚と話した感覚は、日本や日本企業はある程度認められているけれども、”リスペクト”されているという感じではありませんでした。

僕らの扱っていた日本製品は「壊れないけど、スペックが低いし、魅力がない。そして高い」と言われ続けていました。
アメリカのメーカーに負けたくないと、販売だけでなく商品開発も必死にやりましたが、なかなか差は埋まりませんでした。

結論として、Made in Japanは日本人が思っているほど、他の国の人たちからはすごいと思われてはいないのです。
これら二つは、10〜20年前の話です。そこから日本はさらに沈下しています。

そして、それを残酷な事実として示しているのは株価なのでしょう。

カイゼン信奉が「失われた30年」をつくった

平成に入り、世界各国の企業がどんどん成長していく中、日本は取り残されました。
10年前にはすでに「失われた20年」と言われていましたが、さらに10年経って何も変えられず「失われた30年」になってしまいました。

なぜでしょう。
僕らはなんとなく理由を知っているはずです。

僕は「カイゼン(改善)」という高度成長期の成功モデル”だけ”に頼りすぎたことではないかと考察しています。

例えるならば、馬車の時代。
うまく交配させてより強い馬をつくり、車輪を効率よく回るように進化させていく。これがカイゼン。

一方、馬の代わりに、蒸気機関で動かそうとするのが「イノベーション」。

カイゼンは日々+1を積み重ねていくのに対して、イノベーションはゼロが続いた後に、突然+100とか+1,000の進化を遂げる成長モデルです。

歴史が証明するように、破壊的イノベーションが起これば、カイゼンで積み重ねてきた競争力は全部吹っ飛びます。

本来であれば、カイゼンを日々重ねるのは当然で、同時にイノベーションを起こすため活動をやり続けなければならないのが企業活動です。
でも日本は、それをサボってしまった。そのツケが失われた30年なのです。

カイゼンはできて、イノベーションできない組織が多い理由

カイゼンはできるけどイノベーションができない組織には共通の問題があります。

それは、組織に「安全」がないということです。

安全とは何か。
それは「自分の立場」が守られるということです。

経営トップを始め全ての人が「その組織にとってベストは何か」を中長期的に考える。
そこから是々非々で議論をし、経営トップが最善だと思われる方法を選び、決めたら実行するというのが、本来のあり方です。

ところが、社員が上司とは違った意見を言うことができない組織はとても多い。
上司と違う意見を言えば、自分の立場が安全ではなくなるからです。

そんなことを言うと「うちの会社でも言いたいことを言って、ガンガンやっている奴はいる」という方もいるかもしれません。

しかし、割とやんちゃなことを言っているように見える社員が、結局は上司の顔を立てるような”疑似”挑戦者であることも多いのです。
また、尖ったイノベーティブな企画も、会社の稟議を通していくために、どんどんカドが取れて丸くなって、スピードを失っていくことも多発しています。
僕の知る限りの日本の大企業は大体そうです。

一方、カイゼンは安全です。
誰も傷つけず、よっぽどおかしな人でなければ上司も喜ぶ。

社内で軋轢を起こしてまでイノベーションを目指すより、積極的にカイゼンに取り組む方が評価も上がるし、安全なのです。

でもその結果、挑戦し、イノベーションを起こす企業に30年経つと大きく負け越すことになります。
一人一人の保身が「失われた30年」作った結果、それが今の日本です。

カイゼンは、死を引き伸ばしている

客観的には、カイゼン文化がなければ、日本はもっとダメになっていたでしょう。
カイゼンにより、じわっとした成長ができていることも事実です。

ただ、なかなかコテンパンにやられないので、大きく舵を切ることもしづらい。

でも待っているのは「緩やかな死」でしかありません。

それで大丈夫なのは逃げ切れる世代です。いまの40代後半〜50代以上は大丈夫かもしれません。

これまでの延長線上で物事が進むのであれば、いまの20代〜30代の人たちの多くは、さらに落ち目になった日本企業で、安い給料で働き、海外の国から下にみられる時代を過ごすことになるでしょう。

そして比較的優秀な日本人は、外資系企業に就職する。

こうなると、人材がどんどん日本企業からいなくなり、日本の企業は衰退の一途を辿ることになります。

失われた30年は誰の責任か

僕は平成4年から、この失われた30年のほとんどを社会人として過ごしてきました。

去年までの27年間、大企業と言われる会社に勤めましたので、普通の会社員としての感覚も理解しています。
その中で、正しいと思ったことを忖度せず言って、かなりアグレッシブに行動してきたつもりではありますが、その会社を挑戦文化に変えることは全くできませんでした。

組織の文化というのは、本当に重要で、重くて、簡単には変えられない。

でも、本当に僕はその時代に社会人だったものとして、次の世代のために役割を果たしてきたのでしょうか。
「会社の中で役職や力がなかったから変えられなかった」そんな言い訳めいた気持ちもあります。

一方歴史を見れば、社会を変えてきたのは常に若者でした。
明治維新も主役はほとんど20代〜30代です。
僕の好きな坂本龍馬はあれだけのことを成し遂げて、33歳で死んでいます。

現代に目を向けてみます。
いまアメリカの原動力になっているIT産業を引っ張ってきたのも、20代〜30代です。
アップルのスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、フェースブックのザッカーバーグ、Googleの二人の創業者。
皆スタートは20代、しかも前半です。

何が言いたいかというと、悲しいですが、僕はこの失われた30年のまさに戦犯そのものなのです。
少なくとも40歳以上のこれを読んでいるみなさんも同様です。

僕たちの世代は、前の世代が作ってくれた貯金を使い果たしました。

このままもっと悪くなれば、これから日本で育つ自分の子どもや孫の世代に、大きなマイナスを引き継ぐことになります。
それは「嫌だ」と僕は思っています。

Never Too Late

今からでも遅くない。僕はそう思っています。

デジタルネイティブで、上の世代にない新しい視点でビジネスを考えることのできる20代。
社会の仕組みを理解し、経験を十分持っていて戦闘力の高い30代。
会社の中で自分の組織を持っている40代。
そして、より経営に近い立場の50代以上の世代のみなさん。

それぞれの立場で、日本のビジネスを、会社を、社会を変えていきませんか。

唯一の処方箋

では、組織としてどうすればいいのか。

僕が考えるたった一つの処方箋は「挑戦の文化」をつくることです。

考え方はシンプルです。

挑戦する人を評価し、しない人を評価しない。
挑戦を応援した人より、挑戦そのものをリードした人を高く評価する。

そして、それを人事評価にそのまま反映させる。

経営者やマネージャーは、挑戦する人を助けることができたか。この一点です。
上から評価するだけで、挑戦に貢献しない人は資格がないので降格させます。

これを徹底すると「上の言うことを聞いているだけの人」は組織の中で「安全」を失います。
挑戦しなければ、安全でいられない環境をつくるのです。

これを5年続ければ文化として定着するはずです。

30年前に比べて、技術革新でスピードは10倍になっています。
これから10年頑張れば、30年分を取り戻して世界のトップランナーに戻ることもできるはずです。

日本の未来のために。

一緒に取り組みましょう。

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