Colorkrew(以下、カラクル)の評価制度は、普通とは少し違ったやり方です。 一番の特徴は「自分を評価する人を”自分で選ぶ」ということです。
本質的にこれはフェアな360度評価を目指す考え方なのですが、単純に民主的っぽい360度評価をしているだけだと、その会社の評価精度は破綻すると僕は考えているので、今回はそれを書きたいと思います。
日本の評価制度の変遷
日本では年功序列的な評価制度や人事が、バブル崩壊まで主流とされてきました。 これは、製造業中心で高度成長を成し遂げた日本には非常にフィットするモデルでした。
企業の成長は「改善の積み重ね」であること、社員が日本人という共通のバックグラウンドを持っていることを前提とし、着実に仕事をすることが有効な時代。 バブル崩壊後、多くのプロダクトが成熟期を迎えたことで、よりイノベーションが市場から要求されることになりました。
そこでは、単純にそれまでの日本企業の成長モデルは世界で通用しなくなり、人事においても成果評価などが取り入れられるようになりました。 現在では、目標登録による評価が大半の企業で行われています。
アメリカの評価制度
20世期以降の世界経済は常に欧米が世界をリードしてきました。 その中でもアメリカはスーパーパワーであり、評価制度に関するイノベーションの牽引役でしたので、アメリカの評価制度も見ていきたいと思います。
アメリカでは、なんと既に1940年代には半数以上の企業で業績に基づく評価が取り入れられていたそうです。
そして、日本でも多くの会社が取り入れている目標登録のMBO(Management by objectives)は、マネジメント理論の巨匠ピーター・ドラッカーが1954年に提唱しています。
その後、インテルの3代目CEOのアンディ・グローブがOKR(Objectives and Key Results)を提唱し、2000年代にGoogleなどのテック企業がこぞって導入したことで、評価制度の主流となっています。
いき過ぎた評価制度を訂正する動き
一方、MBOやOKRでのいき過ぎた評価を廃止しようとする動きもあります。
「ノーレイティング」という考え方で、いままで点数やランクで評価をつけていたことを止めるということです。 ノーレイティングというと「評価しない」ように聞こえますが、実は人材評価はします。
点数やランクをつけることを止めるということが肝で、あとは相対評価から絶対評価にしていくことなどが特徴です。
それでも結局評価するのは上司
これまでの評価制度の変遷を見てきましたが、一つだけ変わらないことがあります。
それは「評価は上司がする」ということです。 評価を上司がするというのは、ある程度理にかなっていると僕は考えています。
その会社の中で過去に評価された人がマネージャーとなり上司となるので、上司は部下より会社の価値観を理解している傾向があります。
人事や評価制度は会社の価値観に基づいて行われるべきですし、また上司はビジネスパーソンとしてもシニアであることから、評価担当者を選ぶのであれば、上司は妥当な選択肢でしょう。
ただ、一つだけどうしても避けられない問題があります。
上司のレベルに評価のクオリティが依存してしまう
僕にも経験がありますが、上司が変わると評価が180度変わってしまうことがあります。 個人の価値が一瞬で変わってしまうことはないにも関わらず、そういうことが起こります。
それは良かれ悪しかれ、評価が上司の個人的な判断に依存することが原因です。 判断といえば聞こえはいいですが、そこには個人的な感情、平たく言えば好き嫌いや嗜好が影響するのです。
評価で大切なのは納得感
僕は「人を評価するというのは究極的に難しい」と常々思っています。
完璧はあり得ません。 正しい評価とは、もはや神の領域ではないかとも思います。 評価制度はどこまで行っても正解のないものです。
様々な要素を考えてブラッシュアップしていく必要があるのですが、その中で僕が最も大切に考えているのが「納得感」です。
カラクルでは、先日人材評価に関してのアンケートを取りました。 納得度に関しては**85%の社員が「自分の評価に納得している」**と答えました。
これは高い方ではあると思いますが、「納得していない」「全く納得していない」も15%いましたので、全員が納得する評価制度というのはまだまだ遠いなと感じました。
カラクルの評価制度
カラクルの評価制度に関しては、過去いくつか書いているので、興味ある方はそちらを見ていただければと思います。
▼評価制度について https://blog.colorkrew.com/super_flat08/
▼コーチ制度について https://blog.colorkrew.com/super_flat07/
納得感はどうして生まれるのか
カラクルの比較的「人材評価の高い納得感」はなぜ生まれるのか。 これは「評価者を自分で選ぶ」ことが要因として大きいのではないかと思います。 通常の会社では、評価者である上司は自分で選ぶことはできませんので、そこが大きな違いです。
また、最終評価の場には本人も立ち会うことができますし、必要だと思えば自ら意見することもできるような仕組みになっています。 最終評価の場に立ち会わない人も含めて、コーチより全員にフィードバックをすることも義務付けられています。
これらはカラクルの価値観の一つである「オープン」に基づくものです。 普通の会社では見えない部分を見ることができることが、納得感につながるのかなと思っています。
自分で評価者を選ぶ360度評価の限界
「自分で評価者を選ぶと、自分にとって都合のいい人を選ぶのではないですか」という質問をよく受けます。
結論を言えば、「選んだ評価者と、その評価内容を全てオープンにする」ことで、全員に自己規律が自然に効く仕組みとなり、大きな問題にはならないようです。 やってみないとわからないというのは、こういうことかもしれません。
それでもこの仕組みには限界があります。 それは・・・
等級が高い人をさらに上げるのが難しい
等級が低い人に少し同情し、上げたくなってしまう
結果として、中央の等級にだんだんみんなが寄ってきてしまう
これは集団心理をよく現している現象です。
経営の役割
リベラルな思想で、全員参加により運営されているカラクルの人事・評価制度。 人事・評価制度の90%はみんなで運営するということは大前提条件です。それがなければ納得できる制度にはなりません。
ですが、実は経営が重要な役割を果たすべきポイントがいくつかあります。
最上級の等級に引き上げる人材を最初に選ぶこと
ハイスキルであっても価値観を共有しない人の昇級は絶対にしないこと
時代によって変化する職種の価値を評価に反映していくこと
バランスが崩れた場合、調整すること
これらは経営が決めて勝手に介入するというより、チーム全員で運用する人事制度に影響を与えていく形で行います。
カラクルでは、評価の最終決定をする場を「人事ミーティング」としていて、ここでは僕がリーダーである経営プロジェクトのメンバーを中心に集まって運営されています。
ここでもできる限り話し合われたことをオープンにしていくことは言うまでもありません。
▼Colorkrewが運営するSNS型目標管理ツール「Goalous(ゴーラス)」は、活動プロセスを見える化し、評価にも有効的に活用できます。