AIが進化する時代に、生き残る人材になるために―新卒のみなさんへ
就職、おめでとうございます。
これから社会人として最初の一歩を踏み出すみなさんへ、いくつか伝えておきたいことがあります。
特に、IT業界でエンジニアやプロダクトに関わる仕事を選んだみなさんには、正直に話さなければならないことがあります。
今のあなたたちは、これまでのどの世代とも異なるスタートラインに立っています。
それは、危機でもあり、同時にチャンスでもある。
順番に考えていきたいと思います。
AIはすでに「同僚」になりつつある
2023年、ChatGPTが一般に普及し始めた頃、「AIを活用すると便利ですよ」という話が主流でした。
2025年には、AIがコードを書き、バグを修正し、仕様書を起こし、テストを設計するようになっていました。
そして今、僕の周りを見渡すと、AIなしで仕事をしている人を探す方が難しい状況になっています。
この変化のスピードは、落ちることはないでしょう。むしろ、加速していくと見ています。
実際、アメリカではソフトウェアエンジニアの求人数が大幅に減少しているという報告があります。
ジュニアエンジニアの採用を絞り始めた企業の話は、日本でも耳にするようになりました。
「AIが仕事を奪う」という話は、もはや将来の話ではありません。
ジュニアとシニアの間に広がる「谷」
僕がもっとも心配しているのは、これからキャリアを始める若い人たちが直面する、ある構造的な問題です。
かつて、新卒やジュニアのメンバーが担ってきた仕事がありました。
シンプルな機能の実装、バグ修正、ドキュメントの整理、競合調査のまとめ…。
こうした「入門的な業務」が、AIによって代替されつつあります。
シニアは、AIを使いながら自分の能力を何倍にも拡張できます。
一方でジュニアは、AIによって「成長のための踏み台」そのものが失われつつある。
「コードを書いて、失敗して、レビューされて、学ぶ」というキャリアの黄金ルートが、静かに崩れ始めています。
これはエンジニアだけの話ではありません。
プロダクトマネージャーも、QAも、UXデザイナーも同様です。ユーザーリサーチ、競合分析、仕様のドラフト—こういった業務もAIが担えるようになっています。
だからこそ、これから社会人になるみなさんには、「AIとどう共存するか」を意識的に考え続けることが求められます。
20代を、どんな環境で過ごすか
ここで、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
みなさんの中には、「知名度のある会社に入れば安心」という感覚を持っている人もいるかもしれません。安定した給与、整った研修制度、わかりやすいキャリアパス—そういった会社の魅力は確かにあります。
しかし、率直に言います。
AIがこれほどのスピードで仕事を変えていく時代に、20代を「働き方の変革が遅い会社」で過ごすことが本当に正解なのか、真剣に考えてほしいのです。
変革が遅い会社には、過去の成功体験から生まれた慣性があります。
新しいやり方を取り入れるには多くの承認が必要で、変化の必要性を感じていても、組織の重さがそれを阻む。
これは規模の大小に関係なく、多くの会社が抱える構造的な問題です。
誤解してほしくないのですが、大企業の中にも、変化を素早く取り込める組織は確かに存在します。
意思決定がスピーディーで、AIの活用も積極的に推進している大企業も、稀ではありますがあります。
問題は会社の規模ではなく、その組織が「変わり続けることを前提としているかどうか」 です。
AIによって仕事のやり方そのものが変わっているいま、変化にいち早く対応できる組織と、変化を取り入れるのに数年かかる組織では、そこで働く社員の成長スピードに圧倒的な差が生まれます。
20代という、人生でもっとも吸収力が高い時期に、その差はとても大きい。
僕が見てきた中で、変革の遅い環境で20代を過ごした人が、30代、40代になって苦労するケースを何度も目にしてきました。
年功序列の中で「まだあなたの番ではない」と待たされ続け、ようやくポジションを得た頃には、世の中の変化についていくのが難しくなっていた—そういう話です。
環境は、人の成長に想像以上の影響を与えます。
カラクルのような、フラットでスピードを大切にする組織では、新卒であっても年次に関係なく重要なプロジェクトに携わる機会があります。
AIを実際の仕事にすぐ組み込んで試せる環境があります。失敗しても、すぐ軌道修正できる柔軟さがあります。
これは単なる会社の宣伝ではなく、AI時代における成長環境の本質的な話だと思っています。
就職先を選ぶとき、会社のブランドや規模だけでなく、「その会社が、変化することを前提として動いているかどうか」を、ぜひ見極めてほしいと思います。
ただ、一つ付け加えておきたいことがあります。
どんな会社に入ったとしても、最初の2年間は、恐るべきスピードで成長できます。
社会人として初めて経験することばかりの時期は、環境の良し悪しに関係なく、日々の仕事そのものが成長の連続です。
変革が速い会社かどうかよりも、目の前の仕事に懸命に向き合えるかどうかの方が、はるかに重要な時期でもある。
だからまず、どんな環境に身を置いたとしても、最初は目の前の仕事に全力で取り組んでほしいと思います。
その上で、仕事をしていく中で、少しずつ見えてくるものがあるはずです。
この会社は変化を歓迎しているか。自分の成長に見合ったチャンスが与えられているか。
AIの進化に、組織として向き合おうとしているか。
そういったことを肌で感じながら、2年、3年というスパンで、自分がこれからどんな環境でキャリアを作っていくかを、真剣に考えてほしいのです。
最初に入った会社がすべてではありません。
大切なのは、たまに立ち止まって深く考えること。そして自分の成長に正直でいることだと思っています。
AIを使いこなすことを、最初の目標にしてほしい
最初のアドバイスはシンプルです。
AIを恐れるのではなく、徹底的に使いこなしてほしい。
「AIに頼ると実力がつかない」という意見があります。
これは半分正しく、半分間違っていると僕は思っています。
確かに、AIの出力を何も考えずにコピーするだけでは何も身につきません。
しかし、AIの出した答えを理解しようとすること、そしてその答えを批判的に評価すること自体が、学習の質を高めてくれます。
僕自身、1年前と比べてAIを使う量は10倍以上になりました。
しかしそれによって「考える時間」が減ったかというと、むしろ逆です。
AIが出した答えを疑い、改善し、自分のコンテキストに合わせて使う—この「AIを批評する力」こそが、これからの時代に求められるスキルだと考えています。
まずは、毎日AIと一緒に仕事することを習慣にすることから始めてみてください。
「何を解くべきか」を考える人間になる
AIがもっとも得意とすることは何か。
それは、「明確に定義された問いに対して、最適な答えを出すこと」です。
逆に言えば、「何が問題なのか」「何を解くべきか」を定義することは、まだ人間が圧倒的に得意な領域です。
プロダクトに関わる仕事を選んだ人たちには、特に意識してほしいことがあります。
ユーザーが何に困っているか、どんな課題をプロダクトで解くべきか、ビジネスとして何を優先すべきか—こういった「問いを立てる力」は、AIには容易には模倣できません。
エンジニアも同様です。
「このコードを書いてください」という指示はAIが得意ですが、「このシステムが3年後にどう変化するかを踏まえた設計にする」という判断は、人間がしなければならない。
「答えを出す人」ではなく、「問いを立てる人」になること。
これが、AI時代を生き抜くための、もっとも本質的な差別化になると思っています。
スピードと挑戦の量を落とさない
AIを使えば、以前と比べて仕事のスピードは大幅に上がります。
これは本当のことで、カラクルでも「生産性3倍」を目標に取り組んでいます。
ただ、ここに一つ落とし穴があります。
「AIがやってくれるから、自分はゆっくりでいい」と思い始めた瞬間に、成長は止まります。
AIが速くなった分、自分も速く動く。AIがドラフトを出してくれた分、より多くのアイデアを試す。AIがコードを書いた分、設計の質を上げることに時間を使う。
そういう使い方をしている人と、「AIが出してくれるから楽でいい」と感じている人の間には、1年後に大きな差がついているはずです。
「人間にしかできないこと」に投資する
AIが得意なこと—パターン認識、大量の情報処理、コード生成、文章の要約や翻訳、反復的な作業。
AIが苦手なこと—関係性を築くこと、信頼を得ること、チームを動かすこと、倫理的な判断を下すこと。
これらは、AIが進化しても、すぐに変わる領域ではないと僕は見ています。
これからキャリアを積んでいくみなさんには、コミュニケーション力、交渉力、人を巻き込む力、そして信頼を積み重ねる力—こういった部分に、意識的に投資していってほしいと思います。
AIは、「あなたが信頼される人間かどうか」を判断することはできません。
しかし、一緒に働く仲間はそれを見ています。
技術力が高くてもチームで動けない人よりも、チームの力を最大化できる人の方が、AIが進化するほどに価値が高まっていく。そう感じています。
グローバルで通用する視野を持つ
AIによって翻訳・通訳のコストは劇的に下がりました。
しかし逆説的に、グローバルに仕事ができる人材の希少価値は上がっています。
ツールのハードルが下がった分、ビジネスのグローバル化が加速しているからです。
英語を話せるだけでは不十分で、グローバルな文脈で思考し、異なる文化の人々と本質的にコミュニケーションできる人が求められています。
これは語学力だけの話ではありません。
世界の政治、経済、文化を理解し、自分の意見を持って議論に参加できる力—いわゆるリベラルアーツの話です。
毎日ニュースを読んでほしい。
経済紙だけでなく、英語の記事にも目を向けてほしい。自分の専門分野の外に、意識的に知識の幅を広げていくことが、長期的なキャリアを支えてくれます。
手を挙げ続けることが、キャリアをつくる
AI時代の成長環境の話をしてきましたが、どんなに良い環境に身を置いたとしても、最終的に差をつけるのは一つのことに尽きると思っています。
手を挙げ続けること、です。
チャンスは、待っていれば来るものではありません。「やります」と言った人のところに来るものです。
これは昔から変わらない真実ですが、AI時代においてはその重要性がさらに増していると感じています。
理由はシンプルで、AIが「与えられた仕事をこなす部分」を代替していく中で、人間に残るのは「自ら仕事を創り出す部分」だからです。
指示を待つ人の仕事は、AIに近い速度で縮小していく。
一方で、自ら手を挙げ、課題を見つけ、動き出せる人の仕事は、むしろ広がっていく。
若いうちは、失敗を恐れて手を挙げることをためらいがちです。
「もう少し経験を積んでから」「準備ができてから」—そう思っているうちに、チャンスは別の人のところへ行ってしまいます。
準備が整ってからでは、遅いのです。
僕自身の経験を振り返っても、大きく成長できたのは「準備ができていないのに、やると言ってしまった瞬間」でした。
追い込まれて初めて、自分でも気づいていなかった力が出てくる。それが積み重なって、キャリアになっていく。
カラクルのValue 「Stay Uncomfortable」 は、まさにこのことを言っています。
居心地の悪さを避けるのではなく、それを成長のシグナルとして受け取る。
不完全でも、未熟でも、まず手を挙げる。その積み重ねが、5年後、10年後の自分をつくります。
新卒のうちは、失敗しても取り返しがつきます。
むしろ、若いうちにたくさん失敗しておくことが、長いキャリアにとっての財産になります。
失敗できる余白があるのは、実は今だけかもしれない。
「やったことがないから、できるかわからない」は、手を挙げない理由にはなりません。やると決めてから、考えればいい。
社会人人生のスタートで、この習慣を身につけられるかどうかが、その後のキャリア全体を大きく左右すると、僕は確信しています。
キャリアの安定は、会社が守るものではない
最後に、これだけは伝えておきたいと思います。
「知名度のある会社に入れば安心」という時代は、完全に終わりました。
日本最大の企業であるトヨタでさえ「終身雇用を守り続けることは難しい」と発信しています。
どんな会社に入ったとしても、自分のキャリアを守れるのは自分自身しかいません。
キャリアを安定させるのは、会社ではなく、自分です。
ただ、考え方を変えれば、自分を成長させ続けることができれば、AIが進化するほど自分の生産性も上がっていく。
この時代の変化を、むしろ自分の武器にできるはずです。
30代、40代になったときに大きな差がつくのは、20代をどう過ごしたかにかかっています。
変化を前提とした環境に身を置き、不快な挑戦をいとわず、学び続ける。
それだけが、どんな時代の変化にも対応できる、本当の意味での「安定」につながると、僕は信じています。
では、社会人人生のスタート、思い切り楽しんでください。グッドラック!
Colorkrew CEO 中村圭志

